更新日：2023年8月7日

紙上美術館No.183

もののけ姫《シシ神の森（5）》
©1997　Studio Ghibli・ND
～浜松市美術館「アニメーション美術の創造者　新・山本二三展」より～

深く苔むした巨木から成る太古の森。1997年に公開された長編アニメーション映画「もののけ姫」の舞台である「シシ神の森」を描いた作品です。人の手の及ばない神聖な雰囲気をたたえた、まさに「シシ神の森」のイメージそのものである本作品は、実際に映画の背景として使用されたわけではなく、「イメージボード」という、背景美術を描く前に作品の世界観を共有するために描かれたものです。「天空の城ラピュタ」や「火垂るの墓」、「時をかける少女」など、数多くのアニメーション作品で背景美術監督を務めた山本二三は、映画「もののけ姫」で宮崎駿監督と山本を除く4人の美術監督をつなぐ調整役となり、監督と相談しながら「シシ神の森」のビジュアルを固めていきました。制作に当たり、屋久島でロケーションハンティングが行われました。「シシ神の森の入り口から、頭が痛くなるくらいに描いた。死んだら棺桶に入れてほしい」と山本が言った森の描写は、ゴツゴツとした木肌やびっしりとついた着生植物、足を踏み入れたくなるような柔らかな苔などが細密に描かれ、すさまじい迫力を感じさせます。